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筆者の回し蹴りによるビールビン割り


 全日本オープントーナメント大会が終わって一週間ほどしたある日、久しぶりに本部道場へ稽古に行くと、大山泰彦先輩に、

「これから講談社へ写真撮影に行くから、おまえも一緒に来い」

 といわれた。私はまさか自分が試し割りの写真を撮られることになるとは思わなかったから、いわれるままに、見学するつもりで同行した。週間少年マガジン誌上で極真試し割りの特集をするための撮影で、そのとき大山倍達館長に従って講談社へ出かけたのは、泰彦先輩と山崎、そして私の三人であった。

 向こうに到着すると、既にスタジオの準備は整っており、さっそく撮影が始められた。泰彦先輩の自然石割り、山崎のブロック割り、そしてレンガ割りと撮影は順調に進み、最後に山崎がビールビンを足で割ることになった。今では後輩の中にも何人かこの試し割りを得意とする者がいるが、そのときは、私はそれを見るのが初めてだった。ビールビンを逆さにして腰の高さに立て、それを回し蹴りで割るのだが、おさえる者がいないで果たして割れるものだろうかと私は思った。

 一度目、山崎は失敗した。ビールビンがそのまま、前で見ている私たちの方へ飛んできた。

 二度目はきれいに割れた。ビールビンが空中で粉微塵になるのを見て、見事に割れるものだと感心していたら、

「鈴木もやってみなさい」

 と館長からお言葉があった。

 私は、とても自分などにできそうな芸当とは思われなかったので、束の間ふんぎりをつけかねていると、かたわらから泰彦先輩も、

「記念になるから、ゼヒやってみろ――」

 といわれたので、度胸をきめて挑戦することにした。

 自分の腰の高さにビンをセットし、その前に立って雑念をはらう。緊張感で喉がカラカラになり、なかなか精神統一ができない。カメラマンの「用意」の合図 でカメラが回りだす。私は無我夢中でビンの真中を狙って蹴ったが、無常にもビンは割れずに飛び、床に落ちて四散した。足の甲に激痛がはしり、見る間に脹れ 上がってくる。

「もう一度やってみなさい」

 と館長がおっしゃって下さった。

「背足より、スネで蹴るつもりでやった方がいい」

 と山崎がアドバイスしてくれた。一回失敗したことによって、むしろ気持が落ちついてきた。
 二度目の準備がととのった。今度は私は黙想して精神の統一をはかった。心の中で、

「同じ人間のやることだ、自分にだってできないわけがない」

 絶対に割れる、と自分自身にいいきかせ、やおら目をあけビールビンを見ると、先刻より一回り小さく見える。黒帯をしめなおし、呼吸をはかって、思いきり右回し蹴りをくりだした。

 手応えがあった。カメラマンたちが飛び散るビンの破片に驚いて逃げ出し、カメラだけが回りつづけていた――

 このあと、泰彦先輩の頭にスイカをのせ、それを回し蹴りで割る写真も撮った。

 このときの写真が少年マガジンに掲載されたのを見た時は、とても嬉しかった。それにもまして、館長とご一緒に試し割りの撮影に行くというようなことは入門以来初めての経験であり、そのときの感激が今もあざやかに私の胸に灼きついている。

 ――十二月に入ったある日、

「新年の鏡開きに、おまえが表彰されるかもしれん」

 と泰彦先輩に教えられた時、私はにわかに信じがたい気持だった。鏡開きに表彰を受けるのは大変名誉なことであり、私のような者には、大袈裟でなく、夢のような話であった。

 ところが、年も押しつまって、たまたま本部道場で添野先輩に行き合わせたら、

「浩平君の第三回大会での闘いぶりに、館長以下委員の皆さんが感心され、君に極真特別敢闘賞を贈ることが委員会で決定した」

 と教えてくれた。

 夢ではなかったのだ。私は込み上げてくる喜びをおさえきれず、

「やった!」

 と、思わず心の中で叫んでいた。

 そして、年が改まった一月十一日の鏡開き当日――

「これからも頑張って稽古に励みなさい」

 とのお言葉とともに、館長手ずから表彰状と記念の盾をいただいた時の感激を、私は生涯わすれることがないだろう。

 この敢闘賞だが、じつは私のほかにもう一人、他流派の伊東武美という人にも贈られたのである。この隻腕の空手家については、いずれ詳しく触れることになろうが、いますこし機会を先にゆずるとしよう。

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