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 高校生活も三年に進むと、就職のことが話題にのぼるようになった。五月に入ると、それぞれ自分の希望職種を先生に提示し、本格的な就職準備をはじめることになった。私は、その頃はからだのほうも外見的にはすっかり丈夫になり、成績も常に上位のほうだったので、だいたい自分の希望するところへ就職できるものと思っていたが、これはあまりに楽観的にすぎたようだ――

 六月頃から求人の引き合いがボツボツ学校へくるようになり、そして私のクラスの仲間が全校のトップをきって、ある銀行へ就職が内定した。私も、夏休みが終わるまでには就職を決めたいと思っていた。

 九月にはいり、母が担任の先生に呼ばれ、学校へ出かけて行った。何事かと不思議に思っていたら、

「おたくの浩平君は、ふつうの人と違ってああいう身体なので、雇う側はどうしても考えてしまう。一日も早く決まってくれればよいのだが――」

 という先生の話であったそうだ。これをきいて私は大変なショックを受けたが、母の胸中もいかばかりであったろうか。 

 また、先生はその時、

「ふつう身体障害者で片親の家庭に育った子供は、性格的に暗くなったり、グレたりする場合が多いのに、浩平君があんなに明るい性格なのは不思議だ」

 と、いわれたそうである。

 それはさておき、十月に入ってようやく、私は初の就職試験を受けることになった。求人先は電々公社で、仲間十人と試験を受けたが、結果は私ともうひとりの友達が不採用だった。その友達もやはり、身障者であった。幼児のころカゼをひき、医者がカゼ薬と他の薬を間違えて注射したのが原因とかで、右手が左手の半分の太さしかなく、ほとんど自由のきかない状態だった。それでも、その友達は体格には恵まれており、小さい時から剣道をやっていて、当時は二段の腕前だった。

 不採用になったのが私とその友達の二人だけだったので、やはりからだが原因と考えるほかはなかった。――ところが、不採用の通知が届いて一週間ほどたってから、私とその友達の面接試験をもう一度行うという知らせが来て、私たちは電々公社の本社に出かけた。二人とも入念な身体検査を受けたあと、面接でからだのことを仔細に質問された。

 私は、現在はもうなんともないこと、仕事はなんでもできることを強調して答えた。そして、最後に、

「お母さんも、さぞ大変だったことだろうね。早く働いて、親孝行をしなければだめだね」

 と、面接担当者がやさしく言葉をかけてくれたので、今度は大丈夫だろうと天にものぼる気持になった――

 それだけに、三日たち、先生に呼ばれて私だけだめだったと告げられた時は、目の前が真暗になった。家に帰ってから、くやしさがどっと吹き上げてきた。庭先に出て、巻ワラを思いきりたたいた。たたき続けているうちに、涙があふれ出てきた。

「どうしてオレだけがだめなんだ、もうひとりは同じ身障者なのに合格したじゃないか・・・・・・オレだけがどうして差別されなければならないんだ――」

 気がつくと拳の皮がすりむけ、巻ワラは血に染まっていた。
 ――その後、私は五回ばかり試験を受けたが、いずれも同じ結果におわった。十二月になると友達はほとんど就職先が決まり、残っているのは三年全体で十人位となった。私はあせったが、どうにもならなかった。世間というものの冷たさを骨身にしみて感じる毎日だった。

 冬のある夜、母と見通しのたたない就職の話をしているうちに、

「どうしてこんなからだに生んだんだよ、こんなからだで生まれてくるぐらいなら、最初から生まれないほうがよかったよ。勉強なんかしたってなんにもなりゃしないよ、貧乏で身体障害者じゃ生きてたって仕方ないよ」

 と、思わずどなってしまった。私としても、焦燥のあまりの叫びであったが、いってはならないことであった。親の身でどうにもしてやれないくやしさのためか、母は涙を流しながら、

「そんなこといったってしょうがないじゃないか、それは誰のせいでもないんだ」

 と叫びながら、私にむしゃぶりついて来た。

「こんなくやしい思いをするくらいなら、死んだほうがマシだ」

 と私の方も叫びながら、母と取っ組み合いのケンカをやった。部屋の片隅で高校入試の勉強をしていた弟の、暗い、かなしげな表情を見て、私は正気にかえったようだ。見苦しく取り乱した自分を、心の底から悔やまずにはいられなかった。

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渡米をひかえた先輩大山泰彦氏の
百人組手の対戦者をつとめる筆者(右)


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